
東京 × オンライン × トロント、そして海外での研究派遣へ ― 世界を変える大学発スタートアップを育てる
主催:Greater Tokyo Innovation Ecosystem(GTIE) トロント研修の運営:DMZ 対象:修士・博士課程の学生
「英語は不安」「起業はまだ先のこと」「そもそも自分の研究が役に立つのか分からない」。
そんな修士・博士課程の学生9名が、2ヶ月後にはトロントの街で、見ず知らずの医師、獣医師、研究者、投資家に自分でアポイントを取り、英語でインタビューを重ねていました。GTIEが提供するアントレプレナーシップ教育研修プログラム「GTIE Overseas Bootcamp for Graduate Students」は、講義を聞いて終わりではなく、研究の“出口”となる顧客を自分の足で探しに行く実践型プログラムです。ここでは、プログラムの全体像と、2026年夏のトロント研修までの様子をお届けします。
参加学生(6大学) | 9名 |
現地での顧客インタビュー | 68件 |
トロント研修満足度 | 4.89 / 5 |
友人への推奨度 | NPS +89 |
GTIE Overseas Bootcamp for Graduate Students とは
ビジョンは「世界を変える大学発スタートアップを育てる」。
各自の専門分野を土台に、事業化に欠かせない起業知識と実践力を身につけること。とくにディープテック領域の研究成果を社会に実装することを見据え、起業マインドと国際的な人的ネットワークをつくること。それがこのプログラムの目的です。事前研修で起業の基礎と事業化の可能性を学び、海外での研修・研究で主体性と実行力を鍛え、帰国後の報告会で学びとネットワークを定着させる――。派遣前から派遣後までを一体で設計した、約9ヶ月のプログラムです。
参加者には、ビジネス仮説の検証や試作開発に取り組み、プログラム終了後も事業化活動を続けて、将来の大学発スタートアップの創出や、その経営・事業・研究開発への参画につなげてほしい、という期待が込められています。
プログラム全体の流れ
STEP 1 | 東京大学・DMZ Japanでの対面キックオフ講義(1.5日)。リーンスタートアップ、バリュープロポジション、顧客像の描き方を学び、仲間と最初に顔を合わせる。 |
STEP 2 | 顧客インタビューの技法、MVP、知財、ピッチを4回のワークショップで。個別メンタリングでは、自分の研究に合わせたインタビュー計画づくりを伴走支援。 |
STEP 3 | 世界トップクラスのスタートアップ支援団体DMZのプログラムを現地で受講。1週目は顧客インタビューとピッチに集中、2週目はカナダの大学院生と合同で日加の市場戦略や共同開発を考える。 |
STEP 4 | 自ら受入先の海外研究機関を開拓し、2週間〜1ヶ月滞在。基礎研究の延長ではなく、事業化のための開発活動に取り組む。 |
STEP 5 | GTIEのアントレプレナーシップイベントで研修内容を報告。受講者同士で相互フィードバックを行い、学びとネットワークを定着させる。 |
※STEP 1〜3の様子を、以下でご紹介します。
トロント2週間 ― 密着レポート
2026年8月10日から21日まで、カナダ・トロントのDMZ本社を拠点に、学生たちは2週間を過ごしました。1週目は「顧客発見」、2週目は「日加のエコシステムとの接続」がテーマ。(北海道大学の学生は1週目に参加)
WEEK 1 顧客発見ウィーク
8/10 月 オリエンテーション/ピッチワークショップ/インタビュー準備とロールプレイ
8/11–13 火〜木 トロント大学訪問/顧客インタビュー/発表準備
8/14 金 プレゼンテーション(発表10分+質疑5分)
WEEK 2 日加エコシステムウィーク
8/17 月 ピッチグループセッション/Founder Talk
8/18 火 Lab2Market合同 Day1:市場参入とエコシステム戦略
8/19 水 Day2:政策・資金・日加の支援制度
8/20 木 Day3:共同開発の枠組み/基調講演/ACRL
8/21 金 ラップアップ
① 68件。実在の顧客に、自分でアポを取って会いに行く
このプログラムの核は、顧客インタビューです。LinkedInやWeb検索で話を聞きたい相手を探し出し、メールや問い合わせフォームでアポイントを取得。初日にはDMZの英語ネイティブのスタッフとロールプレイで練習し、翌日から街へ向かいます。9名が合計68件のインタビューを実施し、最も多い学生は、関係者が集まる場所に足を運ぶことで、1人で27件を重ねました。
参加学生の研究テーマ | トロントで会いに行った人たち |
|---|---|
携帯型内視鏡シミュレータ | 内視鏡医、医療機器メーカーの元幹部、医療AI研究者、投資家、知財の専門家 など |
馬の靭帯損傷の非侵襲計測 | 獣医師、調教師、馬主、生産牧場の関係者 など |
持続可能な排水処理 | 水分野のコンソーシアム、自治体の下水サービス、水質管理機関の担当者 |
ポータブルロケットテスト施設 | 航空宇宙の研究者、ロケットエンジニア、関連企業 |
ワイン産業の地域発展 | ワイン教育機関の教授、ワイン小売店 |
LLMエージェントによる人材マッチング | HRコンサルタント、スポーツ分野のラボ、人材関連企業 |
wifiを活用したセンシング など | リハビリ・高齢者サービスの専門家、教育・科学コミュニケーション団体 など |
② 初日からピッチ。人前で話す壁を一気に越える
トロント初日にピッチワークショップを実施し、全員がその場で即興のエレベーターピッチに挑戦。話の組み立て方から緊張のコントロールまで学び、すぐにフィードバックを受けます。1週目の最後には、インタビューで得た発見と次の一手を、メンターの前で10分間発表しました。発表と改善を繰り返す設計により、プレゼン力の自己評価も向上(+10.0%)しています。
③ トロント大学訪問と、日本人起業家のリアルな話
滞在2日目にはトロント大学のイノベーション拠点を見学し、現地の教授陣や、参加者と近い分野で起業したトロント大発の起業家2名と意見交換。さらに、Re:Pair Genomics共同創業者の新堀洋介氏、VetsBrain共同創業者の吉本翔氏による特別講演では、大学の研究室から生まれた技術が事業になるまでの歩みを聞きました。
“大学教授の方々と直接お話しし、研究について意見交換できたこと” ― 参加学生
“自分たちの技術のビジネス化に向けて真剣に向き合い、具体的なアドバイスをくださったことも非常に貴重な経験でした” ― 参加学生
④ カナダの大学院生と合同で考える「日加ディープテック」
2週目は、カナダ全土の大学院生・研究者向け事業化支援プログラム「Lab2Market」との共同プログラムを新たに実施(Canada-Japan Deep Tech Commercialization Program)。カナダ側の大学院生8名とともに、カナダの技術集積地、北米と日本の企業との取引の進め方の違い、JETRO・Mitacs・カナダ貿易委員サービスなどの支援制度を学び、「日本とカナダで組む理由」を言葉にするワークに取り組みました。最終日前日には、Wattpad共同創業者のAllen Lau氏による基調講演も行われました。
⑤ 東京で仲間づくり。だから、海外でも一人じゃない
渡航前に東京で対面講義を行い、参加者同士が顔見知りの状態でスタート。全員が最低限のアポイントを確保してトロントに入れたため、現地では初日からインタビューに集中できました。東京で横のつながりができていたため、現地で人間関係に悩むことが少なかったという声も寄せられています。
“対面開催はメンバーの雰囲気や得意ではない英語でのコミュニケーションのハードルが下がり、楽しく学ぶことができました” ― 参加学生
参加した学生の声
“海外に行くことに特に興味がなかったが、単身で海外留学したいと思うようになった。… マネタイズに拒絶反応を示すくらい苦手意識があったが、事業継続のために必要なものと捉えられるくらいには変化した。
“海外で挑戦し、たとえ失敗したとしても、その経験自体が大きな学びになり、決してマイナスではないと考えられるようになりました。
“実際にアポを取ってインタビューをするというのは経験がなかったため心理的なハードルがあったが、プログラムで実際に体験することでハードルがなくなった。
“いきなり前に立たされて自己紹介するとなってもある程度喋れるようになったな、怖気すぎないなと思うようになりました。
“VPCのフォーマットで顧客インタビューを整理することで課題ー解決のフィットが整理できる。このフォーマットは強力だと感じた。
数字で見る、2ヶ月間の成長
プログラムの前後で行った自己評価では、全6項目で向上がみられました。特に「グローバル理解」は+36.0%と最も大きく伸びています。トロントプログラムの満足度は5段階中平均4.89(9名中8名が最高評価の5)、「友人にすすめたいか」を示すNPSは+89と、高い評価をいただきました。
自己評価の項目(5段階) | プログラム前 | プログラム後 | 向上率 |
|---|---|---|---|
グローバル理解 | 2.78 | 3.78 | +36.0% |
バリュープロポジション | 2.56 | 3.33 | +30.4% |
顧客ニーズ発見 | 3.11 | 3.89 | +25.0% |
ビジネスモデル設計 | 2.56 | 3.11 | +21.7% |
起業・事業化知識 | 2.78 | 3.33 | +20.0% |
プレゼン力 | 3.33 | 3.67 | +10.0% |
※参加者9名による5段階の自己評価(1=まったく自信がない、5=非常に自信がある)の平均値。
こんな人に、ぜひ参加してほしい
- 自分の研究の“使い道”を探したい:研究や技術が、誰のどんな課題を解決できるのか知りたい人。
- 起業は「まだ分からない」人も歓迎:起業するかどうかは未定でも、研究の社会実装に関心があれば、顧客の声を聞く力は研究にも将来にも活きます。
- 英語を使って挑戦したい:講義・研修は英語で行われます。応募には、研究分野について英語でコミュニケーションがとれること、ビジネス英語に積極的に取り組む意志があることが求められます。
- 分野を超えた仲間がほしい:2026年度の参加者は、東京大学、北海道大学、上智大学、東京農工大学、広島大学、徳島大学の学生。医工学、航空宇宙、環境、農業、情報など、異分野の仲間と出会えます。
よくある質問
Q. 費用はかかりますか?
A. 海外航空券、現地宿泊費、海外旅行保険、プログラム参加費はGTIEが負担します。国内交通費、現地での移動費、食費、通信費、ビザ費用などは自己負担です(2026年度募集要領)。
Q. ビジネスの知識がなくても参加できますか?
A. 東京でのキックオフとオンライン研修で、ビジネスモデルキャンバスや顧客インタビューの基礎から学びます。ビジネスの学習が初めての学生も参加しています。
Q. 海外での研究派遣先は、誰が決めるのですか?
A. 参加者自身が受入先の研究機関を開拓し、受入の内諾を得ます。基礎研究の延長ではなく、事業化のための開発活動として実施します(2026年度募集要領)。
参加のポイント(2026年度募集要領より)
対象 | GTIEの主幹・共同機関(3主幹大学+15共同機関)に所属し、2027年3月末まで在籍予定の修士・博士課程の学生で、研究成果の事業化を含む社会実装に強い関心がある方。 |
募集人数 | 6名程度(他のスタートアップ・エコシステム拠点の推薦学生も、一部プログラムに参加) |
費用の支援 | 海外航空券、現地宿泊費、海外旅行保険、各プログラムの参加費はGTIEが負担。研究派遣では航空券・宿泊費それぞれ上限30万円まで。国内交通費・現地での移動費・食費・通信費・ビザ費用などは自己負担。 |
選考 | 申請書による一次選考のあと、英語プレゼン(説明10分+質疑10分)による二次選考。研究シーズの新規性、事業化アイデア、市場性、事業化への意欲、英語力などを総合的に評価。 |
参加条件 | 全ての必修プログラム(東京研修、オンライン研修、トロント研修、研究派遣、報告会)への参加と、指導教員の了解が必要。 |
次の挑戦者は、あなたかもしれません。
研究を、世界の誰かの課題解決につなげる2ヶ月間。最新の募集情報は、GTIEのウェブサイトでお知らせします。
お問い合わせ先や最新の募集情報は、上記のウェブサイトでご確認ください。










